現場の声を、一つずつ形に。救馬に込めた4つの工夫
緊急避難用担架「救馬」は、災害時に歩いて避難することが難しい方を、限られた人員でも搬送しやすくするために開発されました。
開発のきっかけとなったのは、地元の社会福祉施設の施設長からいただいた問いでした。
「もし大きな災害が起きたとき、限られた職員で、本当に利用者の命を守れるだろうか」
私たちはこの問いを出発点に、施設職員の皆さまと意見を交わしながら、避難搬送の現場で起こり得る課題を一つずつ整理していきました。
目指したのは、多くの機能を備えた製品ではありません。
緊急時に迷わず準備できること。
限られた人員でも扱いやすいこと。
平坦な屋内で取り回しやすいこと。
現場で本当に必要とされる使いやすさを、できる限りシンプルな形にすることを目指しました。
1.組み立ての手間を減らす「自重ロック」
災害時には、わずかな準備の遅れが避難行動に影響します。
救馬には、展開すると本体の自重によって固定される仕組みを採用しました。複雑な組み立て作業を必要とせず、緊急時にも準備しやすい構造を目指しています。
2.狭い屋内でも方向転換しやすい「6輪キャスター」
介護施設や医療機関などの屋内には、廊下や出入口など、限られたスペースで方向を変えなければならない場所があります。
救馬は、6輪とフリーキャスターを採用することで、平坦な屋内で細かな方向転換をしやすくしました。利用者を救馬へ移乗した後は、持ち上げ続けるのではなく、車輪を使って押して搬送できます。
3.状況に合わせて持ち替えやすいハンドル
避難時には、搬送する人の体格や立ち位置、通路の状況もさまざまです。
そのため救馬には、搬送時の姿勢や状況に合わせて持ち替えやすいハンドルを設けました。取っ手には、握る位置を選びやすい球状の形状を採用しています。
4.自動車部品づくりで培った技術を活用
救馬の足回りや本体構造には、私たちが自動車部品づくりを通じて培ってきた、設計・評価・品質管理の経験を生かしています。
施設職員の皆さまから寄せられた声を設計へ反映し、試作と改良を重ねながら、緊急時の「動かしにくい」「扱いに迷う」「人手が足りない」という課題を減らすための形を追求してきました。
救馬は、備えられて初めて意味を持つ
救馬は、製品が完成しただけで役割を果たせるものではありません。
必要とされる場所に備えられ、使用する方が日頃から扱い方を確認し、いざというときに動かせる状態になって、初めて災害への備えとなります。
だからこそ私たちは、救馬を届けることだけでなく、実演や使用方法の案内を通じて、実際の避難行動につながる備えを広げていきたいと考えています。
地元施設の皆さまとの対話から始まった救馬。
一台でも多く必要な場所へ届け、災害時の「助けたい」という思いを、実際に人を運ぶことのできる備えへ変えていくため、これからも活動を続けてまいります。
※救馬への移乗は、安全確保のため複数名で行ってください。移乗後は、平坦な屋内で1名でも押して搬送しやすい設計です。階段や段差では使用できません。